ドイツの白ワインの特徴 ヨーロッパ随一の寒冷地が磨く透明な酸味
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ドイツの白ワインの特徴
ドイツは白ワインの方が生産量が多い
ドイツで生産されるワインは、6割以上が白ワインです。
高緯度地域にあり、夏の気温や強い日照を得るのが難しいドイツでは、ブドウの完熟度を上げるのが非常に困難です。
そのため、しっかりと熟成が進まなくてもおいしいワインになりやすい白ブドウが多く栽培されており、結果として白ワインの生産量が多いのです。
近年では栽培・醸造技術や設備の発展により黒ブドウの栽培面積も増えてきていますが、それでも過半数が白ワインという状況は変わっていません。
ドイツのワイン産業は、白ワインが主役といっても過言ではないでしょう。
平均的に寒冷な気候なので味や香りが繊細
平均気温が低くブドウの熟成が進みにくいドイツの白ワインは、一般的に味や香りが控えめで繊細です。
ブドウは地下に何十メートルもの根を伸ばして地中の成分を吸い上げたり、地上では光合成を行って様々な成分を果実に溜め込んでいきます。
しかし、気温が低いドイツではブドウの樹の活動があまり活発にならず、温暖な地域に比べて成分の量や種類が少なくなりがちです。
また、果実の熟成にしたがって有機酸などの成分自体が変化しますが、日照や温度が足りないと収穫期になっても十分な熟成が得られません。
結果として、果実味があまり強くない控えめな味わいの白ワインになるのです。
これは、例えばイタリアのようなたっぷりとした味わいのワインが好きな方には物足りなさとして感じられるかもしれません。
でも、インパクトが強すぎると感じ取りにくい繊細な風味のワインを好む方にとっては、魅力的なポイントだといえるでしょう。
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柑橘類を思わせる刺激的で印象的な酸味
ドイツの白ワインは基本的に、レモンやライムに例えられる「柑橘系の酸味」を持っています。
ブドウの果実は、未熟なうちは口がきゅっとするような刺激の強い酸味を持ち、熟成が進むにしたがって柔らかく甘みを感じる酸味へと変化していきます。
寒冷で日照の少ないドイツではブドウの熟成が進みにくいため、比較的刺激の強い刺激が残りやすいのです。
また、主に使用されているブドウ品種も、リースリングやミュラー・トゥルガウなど温暖な地域より寒冷な地域に適したものが中心になっています。
甘口白ワインと極甘口のデザートワイン
ドイツの白ワインといえば、はずせないのが甘口白ワインと極甘口のデザートワインです。
ドイツではもともとしっかりと熟した果実を収穫するのが難しかったため、糖度の高い果汁を使用したワインや、アルコール発酵が終わっても糖が多く残る甘口ワインの評価が高い地域でした。
近年では世界的な需要の変化に合わせる形で辛口のほうが主流になってきていますが、甘口ワインも伝統的な軽めのタイプを中心として現在でも造られています。
また、貴腐ワインやアイスワインなど、何らかの方法で濃縮した果汁を使う極甘口のデザートワインも、ドイツが主要な産地の一つとなっています。
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ドイツの白ワインに使用されるブドウ品種
リースリング(Riesling)
現在、ドイツで栽培されている白ブドウの中でもっとも重要な品種です。
環境によって大きく特徴を変えるタイプのブドウで、ドイツのような寒冷な地域では柑橘系の刺激的な酸味を持つようになります。
逆に温暖な地域では、南国フルーツ系の柔らかく甘さを感じる酸味になりますが、同時にややぼやけたような味わいになりやすいためあまり好まれません。
高級な貴腐ワインの原料として使用されることもあり、世界中の栽培面積のうち6割がドイツに集中しています。
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- おすすめワイン
- ・クロスター リースリング モーゼル Q.b.A.(Klostor Riesling Mosel Q.b.A.)
- ちょっとリッチなおすすめワイン
- ・ベルンカステラー ドクトール リースリング(Bernkasterler Doctor Riesling)
ミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)
19世紀に人工交配によって生み出された、ドイツ原産の白ブドウです。
どちらかというと辛口よりも甘口の白ワインの原料に適しており、近年の辛口中心の需要に合わせて栽培面積が縮小傾向にあります。
寒冷な気候でしかうまく育たず、病虫害の耐性が低いため、ドイツ以外ではあまり見られない品種となっています。
しかし、マスカット系の香りを持つことから日本では比較的人気が高く、近年では北海道でも栽培が試みられています。
- おすすめワイン
- ・ファルケンベルグ マドンナ リープフラウミルヒ(Valckenberg Madonna Liebfrumilch)
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- ・エンデルレ・ウント・モル ミュラー・トゥルガウ・ブントザントシュタイン(Weingut Enderle&Moll Muller Thurgau Buntsandstein)
ケルナー(Kerner)
20世紀初頭に人工交配によって生み出され、20世紀末にはドイツでもっとも多く栽培されていた白ブドウです。
現在ではリースリングなどに追い越されましたが、耐候性や耐病性に優れる強い品種なので、ドイツ以外の国や地域でじわじわと栽培面積が広がりつつあります。
しっかりとした酸味とマスカット系の甘い香りを持ちます。
- おすすめワイン
- ・北海道ワイン 北海道ケルナ-
- ・デクスハイマー・ドクトール・アウスレーゼ ケルナー ラインヘッセン(Dexheimer Doktor Auslese Kerner Rheinhessen)
ヴァイスブルグンダー(Weißburgunder)
「ピノ・ブラン」のドイツでの呼び名です。
近年の辛口はやりに乗って、栽培面積が広がりつつある勢いのある白ブドウ品種です。
柔らかく繊細な味や香り、控えめでやさしい酸味が特徴。
良質なワインの原料とするには厳密に環境を選ぶ必要がありますが、白ワインとしては例外的なほど長期の熟成が可能なこともあり、高級白ワインの原料とすることができます。
- おすすめワイン
- ・カール・ファフマン ヴァイスブルグンダー ビショッフクロイツ(Karl Pfaffmann Weissburgunder Bishofskreuz)