ヴィンテージワインってどういうもの? 分かるようで説明しづらいワイン用語
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「ヴィンテージ」とは、もともと「年度」「年代物の」という意味を持つ単語です。 ワインについて使われた場合も同じで、「何年のワインか」という生産年度を指す場合と、時間を経た「年代物のワイン」を指す場合があります。
年代物を指す「ヴィンテージ」
「古くて価値があるワイン」=「ヴィンテージワイン」
良質なワインは適切な期間熟成させることでさらに品質が高くなります。
こうしたちゃんと熟成を行ったワインは、年を経て味わいを増した革製品やジーンズのように「年代物のワイン」として扱われます。これを「ヴィンテージワイン」と呼びます。ただ単に古いだけでなく、若いワインにない価値があることが条件になっています。
ヴィンテージワインはなぜ高いのか
長い年月を経て高い価値を持ったヴィンテージワインと呼ばれるようになるためには、ヴィンテージ表記のあるワインである他に、正しい方法で保管・熟成されたワインである必要があります。
ワインは非常に変化しやすいお酒で、長期間保管する際には、高温多湿はもちろん光や振動も極力避けなければいけません。
かといって一切手を触れずに冷凍庫のような環境にあればいいというわけではなく、適度で自然な温度変化、一定期間ごとのコルクの差し替えや中身の継ぎ足しなどのケアが必要で、しかも期間が長くなればなるほど注意して扱う必要が出てきます。
もともと素質のある良質なワインを、正しい知識と技術を持った人が、長い間手間隙をかけて世話をすることで、ようやく本当の価値を発揮してくれるようになるのです。
これで早飲み系のワインと同じくらいの値段しかしなかったら、むしろおかしいですよね。
ヴィンテージワインはただ古いだけではなく、自然と人と時間が作り出した価値の結晶とも言うべきワインなのです。
生産年度を指す「ヴィンテージ」
特定の年度を示すのに「ヴィンテージは○○年」と使う
また、ワインに関して、単に「ヴィンテージ」といった場合は、主にそのワインが生産された年度を指します。
ヨーロッパを中心とした伝統的なワイン造りを行う産地では、高級なワインはできるだけ人の手を加えずにブドウを育てるため、年によって品質が大きく変化します。
そのため、「どこのワイン」「誰が造ったワイン」という情報に加えて、「いつ(どの年度)のワイン」かというのが重要になってきます。
フランスのボルドー地方など世界的に取引をされる有名ワインの産地では、年ごとのワインの出来を示す表(ヴィンテージチャート)が公式に発表されているところもあるほど大切な情報なのです。
つまり、しっかり熟成した古くて高品質なワインが欲しいときは
「ヴィンテージワインをください」
と注文し、それに対して
「どのヴィンテージにしますか?」
と尋ねられたら
「○○年(生産年度)のものをください」
と答えるのが正解というわけです。
ヴィンテージ表記のないワインもある
お店のワインの棚を見ていくと気付きますが、ヴィンテージ表記は全てのワインにあるわけではありません。
それどころか、価格の安いテーブルワインを中心に、ヴィンテージの書かれていないワインのほうが多いくらいなのではないでしょうか。これは「ヴィンテージを表示できるワインは、同じ産地・同じ年度のブドウだけを原料としているものだけ」という決まりがあるからです。
上でも書いたように、ブドウの出来不出来は天候によって大きく左右されるため、ワインにも当たり年といまひとつの年があります。 そうなると当然、できるだけ良い年のワインが欲しい、という人が増えるため、売り手側は良いヴィンテージを表示したがります。
また、気温や天気は当然土地によって異なるので、ある産地では出来の良いヴィンテージでも、遠く離れた産地では全然だめ、という可能性もあります。 地元の良質なブドウが足りないからといって、他の産地のブドウを混ぜられると品質が変わってしまうのです。
つまり、「当たり年の(ブドウをほんの少しだけ使ってあとは別の年の原料ワインを使用した)ワイン」「(地元では)優良なヴィンテージ (ではあるけど実際には遠くの産地のあまり良くないブドウを使った低品質)のワイン」 のようなズル表示を防ぐために、厳しい規則が定められていると言えます。
ヴィンテージ表記がないワイン=品質が低いワインではない
ヴィンテージを表示するには一定の条件がありますが、じゃあヴィンテージ表記のないワインはどれもその条件を満たせなかった低品質なワインかというと、そういうわけではありません。 ブドウの出来は良い年もあれば悪い年もあります。
ヴィンテージ表記をしているワインの場合、ブドウの出来が非常に悪い年には、どんなに頑張ってもワインの品質も低下してしまいます。
しかし、他の年の原料や他の産地のブドウを使用できれば、一定の品質を保つことが可能になります。
その産地、その年の特徴を反映したワインとは言えなくなりますが、ヴィンテージを表示しないワインも「おいしいワインを造る」という目的を求めたひとつの結果といえるでしょう。