樽熟成ワインとは何か ワインを樽で熟成させるとなにが変わるの?
記事の目次
樽熟成とは、木製の樽を使ってワインの熟成をすること
樽熟成とは、その名の通り木の樽を使ってワインを熟成させる手法のことです。
木材は通常オーク(ナラ、カシ)を使い、中を火であぶって焦がして使います。
樽以外での熟成としては、金属タンクでの熟成や瓶詰めした後の熟成があります。
木でできている樽は、ちゃんと管理しないとカビてしまったり、ゆがんで隙間ができてしまう可能性もあるやっかいな道具。
樽しかなかった時代ならともかく、現代では金属製のタンクなどもっと扱いやすい設備もいろいろと開発されています。
それなのになぜ樽を使って熟成を行うのでしょうか。
樽の特性とそれによってワインに起こること
木材は微量の空気を通すのでじわじわ酸化が進む
木材は、金属やガラスと違って目に見えない小さな穴が開いていて、栓をしっかりした状態でも少しずつ気体が出入りします。
これによって、樽の中にはちょうどいい量の酸素が常に供給されている状態になり、少しずつ酸化熟成が進みます。
また、逆にワインから蒸発した水分が木肌を通して発散することで、ワインの成分の濃縮も進むことになります。
木材に含まれる成分が溶け出し味や香りに影響を与える
木材にはワインがもともと持っていないいろいろな成分が含まれていて、これが溶け出すことでワインの味わいや香り、色合いなどに影響が出ます。
特に香りについての影響が大きく、バニラやコーヒー、トースト、バターなど、ブドウ本来のものとはかなり異なるニュアンスが付与されます。
この後天的な香りはあまりに大きな違いになるので、ワインの香りを表現する際には「ブケ(ブーケ)」と呼び、ブドウ由来の香り(アロマ)と区別しています。
ステンレスのタンクで寝かせるのとの違い
タンクはフレッシュに、樽では落ち着いたワインになる
一般的に、ステンレスタンクで熟成させたワインはフレッシュで果実味主体になり、樽熟成のワインは落ち着いた複雑な風味になります。
これは、ステンレスタンクが空気をしっかり遮断するのに対して、樽が空気を通し酸化しながらの熟成になるからです。
樽の場合は、ワインからの微量な蒸発・発散も起こるので、揮発しやすい香り成分が抜けやすくなることも、タンク熟成に対して落ち着いた雰囲気になる原因のひとつです。
タンクはすっきり系、樽はコクのある口当たりになる
金属製のタンクは内部に温度調整をするための装置を設置しやすいため、基本的に厳密な温度管理を行うことが可能になります。
樽にもセンサーやちょっとした設備を仕込めないことはありませんが、タンクに比べると自然に任せた状態になるのが普通です。
一般的に、化学反応は温度が高いほど進みやすくなります。
そのため、ステンレスタンクで熟成させたワインはきりっとした酸味が残ったすっきりした味わいになり、樽熟成のワインはコクのあるまろやかな口当たりになります。
タンクだとシンプル、樽熟成では複雑な味わいに
他の物質と反応しにくい金属であるステンレスは、ワインと接触してもなんらかの物質が溶け出したりワインの成分を変化させたりしません。
そのため、タンク熟成のワインはブドウ本来のシンプルな味や香りになります。
一方、樽で熟成させると木材からワインへいろいろな物質が溶け出すことになります。
これによってワインは元々持っていなかった味わいや香りを獲得することになり、複雑でコクのある風味になります。
また、樽からタンニンが溶け出すことで酸化耐性がつき、比較的長期間の熟成が可能な状態になるのも特徴の一つです。
通常はタンニン量が少なくて長期間熟成しにくい白ワインでも、樽でしっかり熟成させることでまるで赤ワインのように長期の保存に耐えるようになるのです。
樽の種類や使い方によってワインの特徴も変わる
新しい樽ほど味や香りに強い影響が出る
熟成用の樽は何年も使いまわすのが一般的ですが、新しい樽ほどワインの味や香りに樽熟成らしい特徴が出ます。
これは、樽からワインに溶け出す成分が有限だからで、ある意味当然のことといえます。
ワインの説明を見ていると「新樽を使用」「3年以内の樽だけで熟成」といったコメントがついていることがありますが、これは別におニューの樽を自慢しているわけではなく、「樽の味や香りがとても強くついています」という意味なのです。
ちなみに、10年ほど使ってワインに十分な影響を与えられなくなった樽は、役目を終えて解体されるか、今度はワインの風味をつけたい別のお酒の熟成用に回されます。
- おすすめワイン
- ・コンティ ゼッカ ドンナ マルツィア プリミティーヴォ(Conti Zecca Donna Marzia Primitivo)
- ちょっとリッチなおすすめワイン
- ・ファルネーゼ エディツィオーネ チンクエ アウトークトニ No.17(Farnese Edizione Cinque Autoctoni No.17)
小さい樽を使っているほうが樽熟成のニュアンスが強い
ワインを熟成させる樽にも、ボトルと同じようにいろいろなサイズがあり、より小さい樽を使っているほうが樽の特徴が強く出ます。
小さいといっても225リットル前後入るサイズなので、軽くユニットバスくらいはあるのですが、大きい樽だと1000リットル前後にもなることを考えるとやはり控えめなサイズといえるでしょう。
樽に使われている木材に対してのワインの量が大きい樽よりも少なくなるため、樽から溶け出す成分の割合が大きくなり、酸化も進みやすくなります。
樽熟成の特徴が強く出た方が好きな方は、「小樽仕込み」「バリック(主にフランス・ボルドー地方で使われる小さな樽)」といった説明がついているワインを選ぶと良いでしょう。
- おすすめワイン
- ・ヴィニエティ・ザブ イル・パッソ(Vigneti Zabu IL Passo)
- ちょっとリッチなおすすめワイン
- ・ジゴンダス オー リューディー ドメーヌ サンタ デュック(Gigondas Aux Lieux Dits Domaine Santa Duc)
ホワイトオークは飲みやすくフレンチオークは長熟用
樽の原料になるオークにもいろいろな種類があり、何を使っているかによってワインに与える影響も変わってきます。
樽用のオークは大きく分けて、「ホワイトオーク(アメリカンオーク)」と「フレンチオーク」の2種類に分類されます。
ホワイトオークはその名の通り白っぽい部分の多い種類で、比較的酸素の透過量が多く、ワインに溶け出す成分の中でも香りに関するものが多くなります。
長く置いておくと酸化が進みすぎてしまい、成分のバランスも崩れてしまう恐れがありますが、短期間の熟成でしっかり樽熟成の特徴をつけるのには適しています。
一方、フレンチオークは樹脂の多い黒っぽい種類で、硬く締まった木質が特徴。
酸素の透過量が非常に少なく、成分の中でもタンニンなどポリフェノール系が多くなります。
長い時間をかけてじっくりと熟成するのに適していて、樽での熟成が終わった後も瓶熟成を続けるような、長期熟成型のワインに使用されます。
樽の説明にホワイトオークとあったら「すぐおいしく飲める飲みやすいタイプ」、フレンチオークとあったら「飲み頃に注意が必要だけどとても濃厚なタイプ」と考えるとよいでしょう。
- おすすめワイン
- ・コノスル スパークリング ブリュット(Cono Sur Sparkling Wine Brut)
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- ・カンガリーラ・ロード・ワイナリー カベルネ・ソーヴィニョン(Kangarilla Road Winery Cabernet Sauvignon)