ワインの基礎知識

ワインとウイスキーを比べてみよう バーで上手に頼めるとカッコいいお酒仲間

ワインとウイスキー
記事の目次

ウイスキーとは大麦をはじめとする穀物が原料の蒸留酒

    大麦

ウイスキーとは、大麦やトウモロコシなどの穀物類を原料とし、アルコール発酵させた原酒を蒸留して造るいわゆる「蒸留酒」の一種です。

基本的に最短でも数年の樽熟成を経てから販売されるため、褐色の水色(すいしょく)と熟成された香りを持ちます

15世紀にスコットランド、もしくはアイルランドで発明され、現在ではイギリス、アメリカ、カナダ、日本などが主要な生産国です。

ワインとウイスキーは基本的にまったく違う種類のお酒

ワインとウイスキーは、お酒としての分類はもちろん、原料も特徴もあらゆる面で異なる「まったく違う種類のお酒」です。

どれだけ異なるか、項目ごとにチェックしてみましょう。

原料の違い ブドウと穀物

ワインはブドウを原料として造りますが、ウイスキーは大麦麦芽を中心に小麦やライ麦、トウモロコシなどの穀物類を原料にします。

アルコール発酵は、酵母という種類の菌類が糖をアルコールと二酸化炭素に分解することです。

しかし、穀物が持つのは糖ではなくでんぷんなので、そのままの状態だと発酵させることができません。

そのため、でんぷんを糖に分解する酵素を発生させるために一度発芽させるなど、ワインにはない手間をかける必要があります

また、ワインの原料はブドウだけですが、ウイスキーは原料の穀物に十分な水分が含まれていないため、水を加えて成分を煮出しその煮汁を発酵させます

造り方の違い 醸造酒と蒸留酒

ワインは発酵した液体をそのまま利用する「醸造酒」、ウイスキーは発酵後に蒸留という工程がある「蒸留酒」です。

蒸留とは、発酵が終わった原酒を沸騰直前まで温め、その蒸気を集めて冷やすことで沸点の低いアルコールを濃縮する作業のことです。

ウイスキーは、アルコール発酵が終わった時点ではアルコール度数7~8%程度しかなく、味や香りもおいしく飲めるようなものではありません。

しかし、蒸留を行うことでアルコール度数は60~80%にまで上昇し、揮発しない成分が分離され雑味の抜けたクリアな味わいになります。

ワインは原料となるブドウ果汁の成分を全て生かして味や香りを構築しますが、ウイスキーは一部の成分だけを利用するお酒なのです。

ちなみに、ワインを蒸留すると「ブランデー」という別の蒸留酒になります。

平均アルコール度数の違い 12度前後と40度前後

ワインの平均アルコール度数は12度前後ですが、ウイスキーは40度前後と3倍以上も強いお酒になっています。

アルコール発酵を起こす酵母は菌の一種なので、(自分でアルコールを生み出すにも関わらず)一定以上のアルコールが存在する環境では「アルコール殺菌」されてしまい活動することができません

そのため、ワインの場合は通常15%ほどで発酵が停止してしまい、これがアルコール度数の限界になります

しかし、発酵後に蒸留によって濃縮するウイスキーの場合は、この限界がありません。

原酒を何度も繰り返し蒸留することで、理論上は97%までアルコール度数を高めることが可能となっており、ちょっと高めに蒸留したあと加水して度数を調整しているほど。

実際には、どれくらい味や香りをクリアにしたいかによって蒸留回数を決定し、消費者の嗜好に合いやすい40%前後に調整しているメーカーが多いようです。

保存性の違い 変化しやすいワインとしにくいウイスキー

ワインは開栓後はもちろん開栓前でも気をつけて保管する必要がありますが、ウイスキーはちょっとやそっとでは変質しない安定したお酒です。

ワインには状態が非常に不安定で変化しやすい成分がたくさん含まれています。

そのため、保管・熟成させる際には温度や湿度を厳密に管理し、光や振動などの外部刺激をシャットアウトする必要があります

しかし、沸騰・冷却を繰り返す蒸留工程を経ているウイスキーは、基本的に非常に安定しています。

直射日光や異常な温度変化のような極端な環境でない限り、保管環境による変質はほとんど心配する必要はありません。

実際、中世にはその安定性から長期間の航海や貿易用として需要が増え、生産が本格化したほどです。

ただ、あまりに安定しているので、ワインと違って瓶詰め後の熟成はあまり見込めないようです。

ワインとウイスキーの類似点

いろいろな点で大きく異なるワインとウイスキーですが、実はわずかながら共通点も存在します。

長期間の熟成で味や香りが向上するものがある

どちらにも、長期間の熟成によって味や香りが向上するタイプの製品が存在します。

ワインはもっともおいしく飲めるタイミングがそれぞれ大きく異なるお酒で、すぐに飲むほうが良いものもあれば、しばらく寝かせて熟成が進んだほうが良いものもあります。

そして、数十年という長い時間をかけて熟成させたワインは、若いワインとは大きく異なる複雑で繊細な味や香りを獲得します

ウイスキーは基本的に瓶詰め前、樽で寝かせている期間に熟成が進みます

しっかりと熟成させたウイスキーは最低限の時間だけ寝かせたものと異なり、高いアルコール度数を感じさせないまろやかな口当たりと、「ひと口で一晩続く」と形容されるほど深く芳醇な香りになります。

どちらも熟成には長い時間と労力がかかりますが、それに見合うだけの高い品質が得られるのです。

高価なボトルはまるで宝石のような高級品

ワインもウイスキーも本来はただのお酒ですが、高級なものになると宝石並みの価格になります。

ワインは高品質なものほど原料となるブドウの生産量が制限され、しかも年によって品質が変化するので希少性が高まりやすいお酒です。

もともと貴族や支配階級によって育まれた文化的な側面を持つことから、資産として認定されるなど社会的にも価値が認められています。

ウイスキーは樽に詰めた原酒が全て時間経過に比例して熟成し続けるわけではなく、何十年も品質が向上するものはほんの一握りと言われています。

また、ワインと違って環境が許せば味や香りのピーク付近を維持したまま保管しておけることも、価値を高める一因と言えるでしょう。

どちらも評価の高いものほどどんどん飲まれてなくなっていってしまうため、残っているボトルの価値は相対的に高まります。

結果、ワインは数百万円~数千万円、ウイスキーに至っては史上最高額で2億円以上もの値がついたことも!

もはや宝飾品や芸術品のような扱いだと言えるでしょう。

国産が世界に認められたウイスキーとこれからのワイン

今世紀に入り、国産のウイスキーが世界的に高い評価を得るようになって来ていますが、ワインはまだまだ発展途上と言わざるを得ません。

ワインもウイスキーも、日本では明治維新後の19世紀から20世紀にかけて本格的に造られるようになりました。

しかし、どちらかというと醸造・蒸留・熟成の技術部分が重要なウイスキーに対し、ワインは原料となるブドウの品質が味わいを大きく左右するお酒です。

春から夏にかけて雨が多く、土壌は保湿性の高い地層、収穫期に台風まで来る日本の環境は基本的にブドウ栽培には向いておらず、十分な品質の原料が収穫できないのです。

結果として、国産ウイスキーは国内の供給が追いつかないほど海外での需要が高まっているのに、国産ワインはまだまだ国際的に存在感を示せているとは言いがたい状況となっています。

ただし、価値観が多様化してきていることや、技術・設備が発達してきていること、無理にヨーロッパ基準のワインを目指すのでなく日本ならではのワインを造る方針が浸透してきていることなどから、今世紀に入ってワインもようやく注目されるようになりつつあります

2019年現在、ウイスキーが得ているような高評価が、近い将来ワインに対しても与えられるようになるかもしれません。

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