ポルトガルの「ポート」ってどんなワイン? 甘口ワインの代名詞!
記事の目次
ポートワインとはポルトガルの酒精強化ワイン
ポートワインとは、ポルトガルのポルト市で作られるフォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)のことです。
通常のワインなら1~2週間かかるアルコール発酵の工程を3,4日で切り上げ、まだまだ糖分が残っている状態の原酒にブランデーを加えて発酵を強制終了するため、基本的に甘口に仕上がります。
アルコール度数は19~22度とワインにしてはかなり高めで、比較的高い保存性を持つことから、中世には長期間の航海に耐えるワインとして重宝されていました。
ヨーロッパを中心とした伝統的なワイン生産国では、生産地や特別なワインの名前を使うことについてワイン法で厳しい制限が定められています。
「ポートワイン」という名前についても、
- ポルトガルの決まった地域で育ったブドウを使い、決まった地域で造られていること
- ブドウ品種や育て方
- 造り方
- 熟成の方法や期間
- 出荷する時期
などが事細かに決まっていて、これをクリアしないとポートワインを名乗ることは出来ません。
ポートワインは自然の甘みとブランデーのコクを楽しめるワイン
本来のポートワインは、甘味料で甘くするわけではなく、ブドウがはじめから持っていた自然の糖分を利用します。また、ブランデーを添加することで、普通の赤ワインにはない独特のコクや香りが加わることになります。
大航海時代に劣化しにくいワインとして開発されたフォーティファイドワインの一種なので、数年から数十年かけて熟成させた長期熟成タイプもあり、一般的なワインとはまったく異なる味わいを楽しめます。
独特の癖があるため、初心者にはちょっと飲みにくいかもしれませんが、普通のワインに慣れてきた方は、ポートワインにチャレンジしてみると、またワインの新しい可能性を発見できるかもしれませんよ。
日本では甘口の赤ワイン」として知られている
本来、「ポートワイン」という名前は厳しい条件をクリアしてはじめて使用することができる保護された名称です。しかし、1970年代までこの原則からはずれ、まったく別のものに「ポートワイン」という名称をつけて販売していた国がありました。
そう、日本です。
日本でワインが本格的に飲まれるようになったのは19世紀の終わり頃、海外の文化が一気に流れ込んできている時代のことでした。もともと日本酒という甘味を感じるお酒があった日本では、渋みや酸味がしっかり残っているワインはあまり受け入れられませんでした。
そこで、現在のサントリーの前身である壽屋(ことぶきや)が、日本人向けに甘味料などを混ぜた甘口の赤ワインをつくり、「赤玉ポートワイン」という名称で売り出します。これは、当時の創業者が本物のポートワインを飲んで、ワインを甘口にするという着想を得たためにつけた名前でしたが、材料も作り方も本来のポートとは何の関係もない別物だったため、1973年には「赤玉スイートワイン」という名前に改称されました。
しかし、70年近く販売される間にすっかりイメージが定着してしまったため、日本では今でも「ポートワインとは甘味料の入った赤ワイン」という誤った認識が一般的になってしまっています。
いろいろなタイプのポートワイン
ポートワインは、原料となったブドウの品質や種類、熟成期間などによって幾つかのタイプに分かれています。
ルビータイプ 酸味や果実味も残るフレッシュなポート
比較的早い段階で出荷されるタイプのポートワインです。
「早い」といっても2年前後の最低熟成期間が定められていて、良質なものは瓶詰め後もさらに熟成されるのが普通なので、一般的なワインに比べるとかなり長熟型といえるでしょう。
ポートワインらしい甘味はもちろん、酸味や果実味も感じられるフレッシュなタイプと言えます。このタイプの中でもさらに質の高いカテゴリーとして、品質の高いブドウを使用し、熟成の期間どころかいつ瓶に詰めるかまで厳格に定められた無濾過ワインの「ヴィンテージ・ポート」や、最低4年の樽熟成が必要で色や香りが独特になる「レイト・ボトルト・ヴィンテージ・ポート」があります。
- おすすめワイン
- ・サンデマン ルビーポート(Sandeman Ruby Porto)
- ・テイラー ファイン ルビー ポート(TAYLOR'S FINE RUBY PORT)
- ちょっとリッチなおすすめワイン
- ・キンタ・サンタ・エウフィーミア エイラードス・ヴィンテージポート(Quinta de Santa Eufemia Eirados Vintage Porto)
トゥイニータイプ 黄金色と豊かなコクの長熟ポート
比較的長期間の樽熟成を行ってから出荷されるタイプのポートワインです。
「トゥイニー」とは、樽での熟成によって色づいた褐色の液色のことで、ウィスキーやブランデーのような美しい黄金色を持っています。長期間の熟成によって甘味はカラメルのような風味を持つようになり、フレッシュさよりも落ち着いたコクが特徴のタイプです。
「コリエイタ」と呼ばれるカテゴリーは、トゥイニータイプのなかでは比較的短い熟成期間で出荷されますが、それでも最低7年の樽熟成を行わなければなりません。
さらに、異なる収穫年の原酒をブレンドする「熟成年数表記トゥイニーポート」は、原料として10年以上、ものによっては50年近い熟成を経た超長期熟成型ポートワインです。
異なる収穫年の原酒を使うので通常のヴィンテージを表示することはできませんが、代わりに使用している原酒の平均熟成年数を表示します。この表示年数が長いボトルはとても価値が高いため、ボトルの状態で数十年保管されることも珍しくはなく、なんと熟成期間が合計で百年に迫るようなものも存在するそうです。
- おすすめワイン
- ・メッシアス・トウニーポート(Messias Tawny Porto)
- ・ケヴェード トウニーポート(Quevedo Tawny Porto)
- ちょっとリッチなおすすめワイン
- ・キンタ・ド・ポルタル 20年熟成 トウニーポート(Quinta do Portal 20 Year Aged Tawny Port)
ホワイトタイプ 白ブドウだけで造る甘さ控えめ・軽めのポート
白ブドウだけを使用して作られるポートワインです。
低温熟成でゆっくり時間をかけて発酵させるため、甘さが控えめになるという特徴があります。特に、「ライト・ドライ・ホワイト・ポート」と呼ばれるカテゴリーのワインは、完全な辛口でかつ普通のポートワインよりもやや低めのアルコール度数に仕立てられるなど、他とは一線を画すポートワインになっています。
- おすすめワイン
- ・メイナーズ ファインホワイトポート(Maynard’s Fine Whiteport)
- ちょっとリッチなおすすめワイン
- ・キンタ・デ・サンタ・エフューミア ホワイトポート(Quinta de Santa Eufemia Whiteport)
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