ワインボトルの示す特徴 実はボトルの形でワインのタイプがわかるんです!
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お店でワインの棚を眺めていると、ワインボトルにはいくつかの種類があることがわかるのではないでしょうか。
実はこれ、適当に形を決めているわけではないんです。
ここでは、ワインボトルの形と中身のワインの関係や、ワインボトルがなぜあのサイズ・形なのかを簡単にご説明します。
ワインボトルの種類とワインの特徴の関係
まずは、代表的なタイプのワインボトルと、どんなワインがそのボトルを採用しているのかをざっと見てみましょう。
ボルドー型
- ワインの特徴
タンニン(渋み)などがしっかり効いた長期熟成型、落ち着いてコクのあるタイプ
その名の通り、主にフランスのボルドー地方で利用されていた形状で、現在最もメジャーなタイプの一つです。
底からまっすぐに本体が立ち上がり、傾斜のきつい肩がついています。
ボルドーのワインは長期熟成のものが多いので底に細かい沈殿物(滓/おり)が溜まりますが、これがグラスに入らないように肩のところで止めつつ注ぐためこの形になっているのです。
- 関連記事:フランスの赤ワインの特徴(ボルドー)
ブルゴーニュ型
- ワインの特徴
酸味や果実味のはっきりしたフレッシュなタイプ、華やかで香り高いタイプ
こちらもフランス、今度はブルゴーニュ地方で利用されていた形状です。
こちらも現在、世界的にメジャーなタイプの一つとなっています。
ボルドータイプよりも肩のスタート位置が低く、なだらかななで肩の形状をしています。
ブルゴーニュでは、あまり長く熟成させないフレッシュなタイプのワインが主流で、滓が発生しづらいため急角度の肩がいらないのです。
また、瓶を互い違いにすると効率的に箱詰めできるので、輸送にはこちらの形状の方が便利です。
- 関連記事:フランスの赤ワインの特徴(ブルゴーニュ)
ライン型(モーゼル型)
- ワインの特徴
主に辛口のすっきり系、熟成には向かない早飲みタイプ
主にドイツのライン川沿い、モーゼル地方で利用されている形状です。
ブルゴーニュ型をさらにスリムにした形で、他のタイプより背が高くなっています。
ドイツは伝統的に白ワインが多く、すっきりしたワインが多かったため滓がほとんど溜まりません。
輸送の必要も(中世から有名だった)ブルゴーニュほどではないため、この形になったと考えられています。
- 関連記事:ドイツの白ワインの特徴
シャンパン型
- ワインの特徴
炭酸ガスを含んだスパークリングワイン
シャンパンを始め、スパークリングワイン用として使用されている形状です。
口のところが金具を止めるために膨らんでいるのと、全体的に厚くて重いのが特徴です。
スパークリングワインは3~5気圧前後のガス圧がかかっているので、普通の厚みの瓶だとちょっとした衝撃で割れてしまう可能性があります。
また、コルクも圧力で飛ばないように末広がりの特殊な形のものを使い、さらに輸送中に飛んでしまわないようにキャップと針金(ミュズレ)で留めるので、口元にでこぼこが必要なのです。
現代ではガラスの質や加工技術も向上しているので少しずつ薄くなってきてはいますが、空の瓶を持って比べてみると普通のワインボトルとの重さの違いがはっきり感じられますよ。
ちょっと変わった形 地域色を強調したいワイン
ボックスボイテル
ドイツのフランケン地方で使われているボトルです。
どら焼きのような膨らんだ円盤状の本体に、首のパーツと底になるへこみがついた独特の形をしています。
これはガラスのボトルが普及する前にワインの入れ物として一般的に使われていた「皮袋」を模した形状なのです。
ちなみに、なんだかカッコいい響きの名前ですが、意味は「山羊の陰嚢」です。
ペッシェ
イタリアの一部で使用されていた形状です。
底のすぐ上で一度すぼまり、真ん中が一番膨らんでいるという妙な形をしています。
実はこれ、魚をイメージした形なんです。
海の近くの産地で良く見られたようで、実用というより遊び心でデザインされたボトルといえるでしょう。
現代ではさらに進化して、割とリアルな、魚そのものの形をしたボトルを使用しているメーカーもあります。
フィアスコ
イタリア、トスカーナ州のキャンティ地方で使用されている形状です。
フラスコ状のボトルに藁で編んだ取っ手付きのカバーがついています。
ガラスのボトルが出始めた頃の原始的な形で、伝統的なボトルと言えるでしょう。
ワインボトルの容量
ワインボトルはなぜ750mlなのか
いろいろな形状があるにもかかわらず、ワインボトルの容量はほとんどが共通して750mlです。これは偶然ではなく、ちゃんと理由があるんです。
ガラスのボトルが一般的に使われるようになった頃、生産国からの重要な輸出先の一つはイギリスでした。
当時のヨーロッパにおける大国で、かつ自国ではワインを作れないイギリスは、フランスを中心に多くの主要産地のワインを輸入していたのです。
そして、まだワインが樽で流通していた頃からイギリスで使われていた単位に「ガロン」があり、イギリスの1ガロン=約4.5リットルでした。
このことから、ワインを小分けにするワインボトルもガロンの何分の一かが都合が良いということになり、ガラスで成形しやすいサイズや効率から1/6の750mlが選ばれたというわけです。
これだと、12本=1ダースで2ガロン(9リットル)になるので、換算が簡単だったのです。
750mlじゃないワインボトル
ワインボトルは「ほとんどが」750mlですが、いくつか例外的に違う容量のものも存在しています。
一番オーソドックスなのは「ガロンの約数・倍数」のパターン。最終的に750mlが一般的になったとはいえ、それまでには「ガロンの何分の一」「ガロンの何倍」を基準に、いろんな容量のボトルが試されました。
その大部分は現在では使われていませんが、750mlの倍の1500ml(マグナム)や、半分の375ml(ドゥミ)など、いまでも生き残っている規格もあります。
ドゥミのワインボトル
また、何らかの事情で中途半端な容量になっているパターンもあります。例えば、日本のワインの一部は一部が日本酒と同じ720mlです。
これは、日本で使用されている「1合」「1升」という単位に合わせたからで、当時の日本人にもわかりやすかっただけでなく、容器も同じものを利用できたため便利でした。
さすがに近年では国際的な基準に合わせるところが多くなっていますが、今でも昔ながらの容量で販売しているメーカーも残っています。
ワインボトルの形状の秘密
ワインボトルの底はなぜへこんでいるの?
ワインが入っているうちはわかりづらいのですが、ワインボトル、特に赤ワインのボトルには底が大きく内側に出っ張っているものがあります。
量を多く見せるための上げ底!ではありません。(内容量は750mlと表示がありますしね)これは、底にたまった滓(おり)が舞い上がりにくくするための工夫で、ちゃんと「パント」という名前もついているんです。
底が平らだと、ワインを注ぐために傾けたときにボトル内に対流が起きて、せっかく沈んだ滓がワインに再び混ざってしまいます。
底にパントがあるとこの対流の動きが変わり、滓の近くのワインが動きづらくなるのです。
そのため、長期間熟成させるような滓が発生しやすいワインほど大きなパントがついているボトルを使い、滓が出る前に飲むワインのボトルは底が平らなものを使用しているのが一般的です。
ワインボトルの「肩」のバリエーションの理由
ワインボトルの肩の部分が、なだらかだったり急な角度だったりするのも滓に関係しています。
ボルドー型のボトルが輸送の効率を犠牲にしてまで急角度の肩を持っているのは、その部分で滓を食い止めつつワインを注げるようにするためです。
滓の心配があまりないワインは、ブルゴーニュ型やライン(モーゼル)型のような、なだらかな形状のボトルを使用するのが普通です。
ワインボトルの色はなぜ暗い?
ワインボトルは、黒っぽい茶色や緑色のものが多く、事前にワインの色を見ることができません。
これは別に意地悪をしているのではなく、ワインが光で劣化してしまうのを防ぐための工夫です。
ワインは非常に敏感なお酒で、直射日光のような強い光はもちろん、間接光や照明など人工の光のような弱い光でも影響を受けてしまいます。
そのため、黒や緑など少しでもその影響を弱める色のボトルを使用して、劣化を防いでいるのです。
ただ、最近では透明なガラスの紫外線カット技術も進んでいるため、あまり長期間熟成させないタイプのワインでは透明なボトルを採用しているものも増えてきているようです。