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スペインの「シェリー」ってどんなワイン? 独特な香りと癖になる味わい

シェリーのワイン
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記事の目次

シェリー酒ってどんなお酒?

シェリー(シェリー酒)は、スペイン南部、アンダルシア州の酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)です。(酒精強化ワインとは、蒸留酒を添加して造るアルコール度数が高いワインのこと)

使うブドウの品種や醸造方法、熟成の仕組みなどいろいろ特殊なポイントが多く、普通のワインはもちろん、酒精強化ワインのなかでも独特の特徴を持つワインになっています。

ポルトガルの「ポートワイン」「マデイラワイン(マディラ酒)」と共に、世界三大酒精強化ワインとして知られています。

特殊な造り方とシェリーの特徴

アルコール発酵が「終わってから」ブランデーを加える

ポイント
発酵を途中で止めないので糖分が残らず辛口に仕上がります

シェリーが属する「酒精強化ワイン」というカテゴリーのワインは、造る過程でブランデーなどの蒸留酒を加えて造るお酒です。蒸留酒をいつ加えるかは種類ごとに違うのですが、シェリー以外は通常発酵の途中で蒸留酒を加えます。

これは、アルコール度数を急激に引きあげて酵母菌の活動を止める(いわゆるアルコール殺菌の状態にする)のが目的で、これによって糖分が残った状態でアルコール発酵が終わるため、酒精強化ワインは一般的に甘口になっています。

しかしシェリーの場合は、アルコール発酵が完全に終了した後で添加するので、酒精強化ワインとしては異例なことに辛口になるのです。(一部例外もあり)

ブランデーは入れるけどアルコール度数は上げすぎない

ポイント
すっきりと飲みやすくなる上、この後の工程でアルコール度数ごとにタイプが変化

発酵が完全に終了したら、いよいよブランデーを添加します。
ブランデーといっても、市販されている飲むためのものと違ってアルコール度数が77度もあるものを使用。酒精強化ワインにブランデーを加えるのは、アルコール度数を高めて発酵を止めるのが主な目的なので、これくらいは必要なのです。

ところが、シェリーの場合はこのブランデーの量が普通の酒精強化ワインよりも少なく、アルコール度数が15度、もしくは17度くらいまでしか上がりません。
辛口な上にアルコール度数も控えめになることで、シェリーはよりすっきりとした飲みやすい酒精強化ワインになるのです。

また、15度と17度の2種類の度数が設定されていることで、この後の樽熟成の工程でそれぞれ別タイプのシェリーに変化します。

樽を満タンにせずにあえて隙間を作る

ポイント
空気に触れることで特殊な酵母が膜を作ったり酸化が進んだりして独特の味わいに

アルコール発酵を終えて蒸留酒を添加したシェリーは、樽に詰めて熟成することになっています。
普通、ワインを樽熟成する場合は、酸化・劣化を防ぐためにぎりぎりいっぱいまでワインを詰め、空気がはいる隙間を残しません。

しかし、シェリーでは逆にワインを樽の2/3~4/5くらいまでしか入れず、あえて樽の中に空気が残るようにします。こうすると、アルコール度数が15度までのものは特殊な酵母が発生してワイン表面に「フロール」と呼ばれる膜を作り、酸化を防ぎつつ独特の香りをつけます。

一方、アルコール度数が17度まであがったものは、アルコール殺菌されてしまって酵母が活動できないのでフロールが発生せず、酸化が進むことでまた違った香りになっていきます。

「秘伝のたれ」方式の独特な熟成方法

ポイント
古いものに若いものを注ぎ足しながら熟成することで安定して深みが増す

タイプによっても異なりますが、シェリーは数ヶ月から数年、長いものだと数十年の樽熟成を行います。そして、シェリーはこの熟成方法も独特です。

普通、ワインを樽で熟成させる場合は樽ごとの単位で管理され、他の樽に移動したり出荷する際には全部一緒に動かすのが基本です。

しかし、シェリーの場合は出荷の時に全て汲み出すことをせず、樽に半分くらい残った状態で少し新しいものを注ぎ足しますそれはまるで、前日の残りに新しく作ったものを注ぎ足して使い続ける、焼き鳥やうなぎの「秘伝のたれ」

こうすることで、ブドウの出来や熟成の良し悪しで製品の味がぶれてしまうのを防ぎ、安定した味わいをキープしているのです。

また、新しいものを足しているとはいえ、製造を中止しない限りは延々と熟成を続けている状態になるので、年を重ねるごとに深みが増していくという利点もあります。

シェリーの熟成では、樽を何段にも積み重ねて一番下の樽に一番古いものを詰め、出荷して減った分を一段上の樽から補充、その段の減った分はさらにひとつ上の段から…と進め、一番上の樽は新酒で補充するという手法が取られます。

この効率的な仕組みは「ソレラシステム」と呼ばれています。

いろいろなタイプのシェリー

大きく分けて「フィノ」と「オロロソ」の2タイプ

シェリーは熟成中に「フロール」という酵母の膜ができるかどうかで特徴が大きく変わります。

アルコール度数が低め(15%前後)でフロールが発生するタイプを「フィノ」、アルコール度数が高め(17%前後)でフロールが発生しないタイプを「オロロソ」と呼びます。

フィノのなかには、

  • さらに産地を限定する「マンサニーニャ」
  • 最初はフロールがあったのに途中で消えてしまった「アモンティリャード」

があり、オロロソの仲間には

  • フィノのつもりで熟成し始めたのに、フロールができなかったのでもう一度ブランデーを足してオロロソに切り替えた「パロ・コルタド」

というイレギュラーが含まれます。

フィノタイプのシェリーはシンプルなすっきり系

おすすめの飲み方
冷やしてシンプルな料理と共に

フロールによって酸化から守られるフィノは、すっきりとした風味に仕上がります。
ブランデーを添加しており、フロール由来の独特の香りもついているので、普通の白ワインよりは濃い味わい・香りですが、酒精強化ワインとしてはシンプルであまり難しいことを考えずに楽しめるタイプと言えます。

飲み方も白ワインに近く、きりっと冷やして飲むのに適しています。塩だけで味付けした魚や肉のグリル、緑黄色野菜やポテトのサラダ、オイルを効かせたマリネなど、シンプルな料理と合わせると良いでしょう。

ただ、途中でフロールが消えて酸化もしているアモンティリャードだけはややコクありになるので、バターやソースを使ったややこってりした味付けの方が合うようです。

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オロロソタイプのシェリーは蒸留酒のようなコクありワイン

おすすめの飲み方
常温で濃い味付けの料理と一緒に

フロールを作らずにしっかり酸化するオロロソは、辛口ではあるもののカラメルのようなコクを感じるワインになります。きれいな琥珀色の水色や高めのアルコール度数もあいまって、さながら蒸留酒のような飲み応えを持ち、じっくりと味わいながら飲みたいタイプのワインになっています。

オロロソはフィノと異なり、常温(15~20度前後)のほうが風味を楽しめるタイプです。

料理は、スパイスやハーブで濃いめの味付けにしたステーキ、煮込みハンバーグ、エビチリなどのこってりしたものが最適。クリーム多めのチーズや、ビターなチョコレートなどと合わせてもおいしく楽しめます。

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フィノ・オロロソに含まれない、例外的に極甘口のシェリー

おすすめの飲み方
しっかり冷やしてデザートとして

生産量は極わずかですが、辛口ではない、極甘口のシェリーも存在します。
他のシェリーと違う種類のブドウを使用する、「ペドロ・ヒメネス」「モスカテル」です。これは、それぞれ同名のブドウだけを使用し、陰干しして糖度のあがった果汁を使って作ります。

フィノやオロロソとはあまりにもかけ離れた特徴を持つため、「甘口のシェリー」というよりは独立したカテゴリーと思ったほうがいいかも。強い甘味を持つのでしっかりと冷やし、単独、もしくは濃いめのケーキやドライフルーツなどと共にデザートとして楽しむのがおすすめです。

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