ワインの基礎知識

「寝かせたワイン」と「古いワイン」の違いって何?

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専門店などの棚に並んでいる高級ワインの中には、数十年もの時間をかけてじっくり寝かせた、いわゆる「ヴィンテージワイン」と呼ばれるものがあります。これらのワインは基本的に高価で、1本当たり数万~数十万円という値段がついていることもめずらしくありません。

しかし、だからといって長い時間を経たワインが全て高級ワインになるわけではなく、例えば実家の押入れや物置に忘れ去られていたワインなどは、一般的にはほとんど価値のないただの「古いワイン」とみなされます。

この違いはいったいどこにあるのでしょうか。大きく3つのポイントに分けてチェックしてみましょう。

寝かせるワインは早い段階で飲むと美味しくない

ワインは時間や環境によって状態が変わっていくお酒です。

この変化はけしてランダムに起るものではなく、基本的に「品質が良くなる(熟成)」→「品質のピーク」→「品質が悪くなる(劣化)」という山型のグラフを描きます。そして、品質のピークがいつくるかは、ワインによって大きく異なります

どうやって寝かせても価値が上がらずただの「古いワイン」になってしまうのは、ピークが比較的早い時期に到来するタイプの早飲み系のワインであるといえます。このタイプは販売されている時点ですぐおいしく飲めるように設計されているため、時間を置けば置くほどピークを過ぎ、劣化が進んでしまうのです。

逆に、寝かせることで「ヴィンテージワイン」として価値が上がるワインは、最初から長期間寝かせることを念頭に造られます。渋みや酸味、香りのバランスなどが数十年後に品質のピークを迎えるように変化するので、早い段階ではおいしく飲むのが難しい製品も少なくありませんが、その分ピークに達したときの質の高さは早飲み系の比ではありません。

寝かせておいしくなるワインは、そもそも造られた段階から別物なのです。

適切な期間寝かせると味や香りが良くなる

同じだけ年数の経ったワインでも、もともとの長期熟成する能力の有無、そして与えられた環境によって価値がまったく異なる「ヴィンテージワイン」と「ただの古いワイン」ですが、当然価格だけでなく味や香りもまったく違ってきます

古いワインは多くの場合酸化が過剰に進み、嫌な渋みや酸味が強くなっています。香りは飛んでしまってあまり感じられないか、場合によっては嫌な香りがするようになっているケースも。複雑味や果実味は失われていて、飲めないほどではないにしても、ちゃんとピークを迎えた頃に飲むのに比べて明らかにおいしくありません。

それに対して、正しい環境で正しい期間熟成したワインは、味や香りのバランスが絶妙です。強すぎる渋みや酸味は丸く穏やかになり、その陰に隠れていた複雑で繊細な味わいが感じ取れるようになります。香りも複雑さを増し、鼻を突くような激しさではなく、いつまでもかいでいたくなる落ち着いた芳しさを獲得します。アルコールはほとんど変わらないはずですが、バランスが良すぎてお酒であることを意識しなくなるケースもめずらしくありません

ワインの正しい熟成には、長い時間に加えて知識や労力など多くのコストがかかります。 しかし、それを超えて得られる高い品質は、それを補って余りあるほどの驚きや喜びを与えてくれるのです

長期間寝かせるためは適切な環境を維持し続ける必要がある

しかし、長期熟成可能なワインが、全て高級ワインになるわけではありません。

ワインには熟成に適した保管環境というものがあるからです。ワインは外部からの刺激で簡単に変質・劣化してしまうお酒なので、光や振動は極力避ける必要があります。

温度は高すぎるとバランスが崩れてしまいますが、低すぎるとうまく熟成が進みません。

湿度も同様に、高すぎればコルクにカビが生え低すぎればコルクが乾燥して外気がボトルに入ってしまうリスクがあります。

これらの要因は、ひとつずつはわずかな影響しかないかもしれませんが、数十年という長い時間をかけて積み重なることで大きな差を生む可能性があります。その結果、本来であれば熟成して品質のピークを迎えたヴィンテージワインとなるはずだったのに、不適切な環境によってただの古いワインになってしまうものが出てくるのです。

ヴィンテージワインが高価なのは、こうした「適切な環境を維持し続けるコスト」がかかっているのも大きな要因のひとつです。

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