ワインの知識の基本の「き」 ワインってどんなお酒?
記事の目次
普段、ワイン以外のお酒しか飲まない方はもちろん、お酒そのものに興味が無い方でも、ワインというお酒の存在を知らない方はほとんどいないでしょう。
でも、あらためて「ワインってどんなお酒?」と聞かれると、意外と答えられないのではないでしょうか。
ここではまず、ワインとは具体的に何を指すのか、どんな特徴を持っているお酒なのかを簡単にチェックしてみましょう。
「ワイン」って具体的に何のこと?
原料はブドウ果汁のみ!
大原則として、ワインに使用できる果物はブドウだけです。
こう書くと当たり前のように聞こえますが、実は日本にはまだワインについて厳密に定めた法律がないため、他の果物を原料とするお酒なのに「○○(原料名)ワイン」という名前で販売されているものや、ジュース原料のような濃縮果汁から造られたものがあります。
これは「ワイン」という言葉の本来の意味からすると誤用だといえます。
(ワインの基準となっているヨーロッパでは「ワインという名前を使うなら新鮮な(冷凍物やレーズン状ではない)ブドウの果汁だけを使っていないとダメ」という法律があり、他の果物はもちろん水が必要な濃縮果汁も使えません)
ただ、今世紀に入ってからは日本でもヨーロッパ基準の法律を作る動きが進んでいますので、今後は正しくない使い方をしているものは徐々に無くなっていくと思われます。
ワインはビールや日本酒の仲間
全然違うもののように感じるかも知れませんが、ワインとビール、日本酒は同じカテゴリーのお酒なんです。
「酵母と呼ばれる種類の菌が糖を分解してアルコールにする」という現象が「アルコール発酵」です。
そして、発酵したあとそのまま飲むものを「醸造酒」、これを蒸留して濃縮したものを「蒸留酒」と呼びます。
ワインやビール、日本酒は、この醸造酒という種類のお酒という意味で仲間であるといえます。
ちなみに、ワインを蒸留すると「ブランデー」という蒸留酒になります。
- ワインとビールの関係ついて詳しく知りたい方はこちら
- 関連記事:ワインとビールを比べてみよう ワインとビールが仲間って本当?
ワインのアルコール度数はだいたい11~14%くらい
ブドウの皮には酵母菌がくっついているので、果実を潰して放置しておくだけでも勝手に発酵が始まります。
ただ自然に発酵しただけでは、当然ながら味や香りはあまり良くならず、アルコール度数もあまり高くなりません。
そのため、現代ではほとんどの場合、培養した酵母を加えて発酵させる手法をとっています。
ワイン用の酵母を使って、温度管理など正しい技術で造られたワインのアルコール度数は、平均して11~14%くらいになります。
日本で一般的に飲まれているビールは、アルコール度数が5~6%。
日本酒は種類にもよりますが、普通は14~15%くらいです。
つまり、ワインのアルコール度数はビールの2~3倍、日本酒の2/3~3/4くらいになります。
お酒の種類としては同じでも、アルコール度数はビールや日本酒とはかなり違いますね。ビールのようにごくごくと飲むことは無いにせよ、口当たりのよいすっきりしたワインや爽やかなスパークリングワインなどはジュースのように飲めてしまいます。
でも、アルコール度数的には意外と高いので、お酒に弱い人はもちろん、ある程度強い人でも注意が必要です。
ワインには数百種類の香り成分が含まれている
お酒の好みについて考えるときには、どうしても酸っぱいとか甘いとかの「味」のほうへ意識がむいてしまいがちです。
でも、ワインにとってもっとも重要といえるのは、実は味よりも香りなんです。
ワインに含まれている香り成分はなんと数百種類!
数え方にもよりますが、赤ワインで500前後、白ワインには700以上の成分が含まれているそうです。
そして、どんな成分が含まれるかや、成分それぞれの(ほんのごくわずかな)量の差、濃淡などによって、そのワインがどんな香りになるかが大きく変わってくるのです。
また、この無数の香りの中には、単一だとむしろ悪臭と感じられるものも含まれています。
しかし、それが他の成分と互いに影響しあうことで、全体としてはとても芳しいよい香りとして感じられるようになります。
この複雑に入り組んだ仕組みの香りこそ、多くの人を虜にするワインの最大の魅力といえるでしょう。
- ワインの香りについて詳しく知りたい方はこちら
- 関連記事:ワインの「アロマ」の意味とは 「ワインの香り」だけだと半分だけ正解
ワインと世界のつながり
ワインは古代から現代に至るまで、世界的にも重要な飲み物となっています。
ワインは世界最古のお酒?
ワインは、世界でも最も古い歴史を持つお酒だと言われています。それは、ブドウからワインへの変化のしやすさに関係があります。
スーパーなどに売っているブドウを食べてみるとわかるように、ブドウには糖分が含まれています。
そして、発酵を起こす菌である酵母も、ブドウの皮に自然の状態でくっついています。
酵母は皮を通過することができないので、そのままならブドウの果汁(の中に含まれる糖分)に接触することはできません。
でも、実が熟して落ちたり風で揺れて傷がつくなど、何かの拍子に皮が破ければ、別に人間が手を加えなくても自然と発酵が始まり、ワインの状態になってしまいます。
現在見つかっている最古のワインの痕跡は、メソポタミア文明が起ったチグリス・ユーフラテス河の上流の遺跡で見つかっていて、その時期はなんと西暦前8000年頃にまで遡ります。
この頃のワインは野生のブドウが自然に発酵したものを採集するか、集めておいたブドウが勝手に発酵したものであったと考えられています。
発酵のしくみが解明されていなかった太古の人々にとって、ワインは自然からの不思議でおいしい贈り物だったのです。
ワインは世界中で造られている
地中海からヨーロッパへと広まったワイン造り。
今でもかなりの割合をイタリアやフランスなどヨーロッパの主要生産国が生産していますが、だんだんとアメリカやオーストラリア、ニュージーランド、チリなどヨーロッパ以外の生産国、いわゆる新世界(ニューワールド)の割合が増えてきているようです。
2016年時点でのワイン生産国は、実に90カ国以上!その中には(まだまだ生産量自体は微々たるものですが)日本も含まれています。
ワインの全世界での年間生産量は、約2467万キロリットルです。(2017年度)
日本酒は年間約52.7万キロリットル(2017年度)なので、その約47倍!
20世紀中は基本的に右肩上がりで生産量が増えてきましたが、今世紀に入ってからは増えたり減ったりで、長期的には横ばいになってきています。
ただ、それはワイン市場の成長が止まってしまったからではなく、全体的に「量より質」の価値観が広まっているからだと考えられます。
安いワインを大量に消費するより、量は少なくてもおいしいワインを、と考える人が増えているということです。
醸造技術や設備の進歩によって、いままでブドウ栽培ができなかった土地でもワインが造れるようになってきているため、ワインの産地は今後も広がっていくことが予想されます。
- ワイン用語の新世界について詳しく知りたい方はこちら
- 関連記事:ワイン用語の「新世界」っていったいなに? 定義やワインの特徴
まとめ
- ワインとは、ブドウ果汁を使った醸造酒のこと
- お酒の種類としては、ワインはビールや日本酒と同じカテゴリーに入る
- ワインのアルコール度数は11~14%程度で、ビールより高く日本酒より少し低め
- ワインには数百種類もの香り成分が含まれていて、これがワインの味までも大きく左右する
- ワインの生産量は年間約2500万キロリットルで日本酒の約47倍
- 生産国は90カ国以上で、今後も広がっていくことが予想されている